【昔話】90円の重み

ふと、子供の頃を思い出す時ありませんか?
私は結構あるんです。
あれは小学校1年生くらいの時だったと思いますが。
私は当時、営団住宅の11階に住んでまして。
ある日、父からおこづかいを90円貰ったんです。
たった90円だったけど、それが嬉しくて嬉しくて。
その90円とポケットに入れて、すぐ近くの駄菓子やに走っていきました。
家を出て階段を11階から1階まで駆け下りて、ダッシュで1分もかからない駄菓子屋へ。
駄菓子やであれもいいな、これもいいなって思いながらギュッとお菓子を握り締めて
レジに行ったんです。
そこで気付いたんです。
お金が20円しかない事に。
お菓子は返して、なくした70円を必死で探しました。
折角、父から貰ったお金をなくした自分を責めながら。
泣きじゃくって探しても結局見つからず、家に戻りました。
父と母に70円なくした事を打ち明けると、笑顔で言ってくれました。
「これからは気をつけるんだよ」、と。
なんかホッとしたのと、すごくその言葉に救われたので、一気に涙がまた出てきました。
今、私は自分でお金を稼ぐようになって、一人で生活をしています。
親には仕送りを毎月しています。
90円なんて、こうして自立した今ではたいした金額ではないのかも知れません。
でも、そのたった90円の(正確に言えばなくした70円の)価値を忘れないようにしたいです。
たった90円を貰って、はしゃげるだけはしゃいだあの子供の頃を忘れないように。