【昔話】奇異な存在、特異な存在

小学校の時の話を少ししようと思います。
6年間一緒のクラスだった人がいまして、名は鶴岡さん。
その鶴岡さんなんですが、まったく人と口をきかない人だったんですね。
噂では、1年生の時に当時の担任からひどい事を言われて、それ以来人と話さなくなったようなのですが
私は一緒のクラスでありながらそんな事には気付かず鼻水ビャービャー出してのんきに生活を送ってました。
鶴岡さんは学校にはくるものの、何も誰とも話さないのでいつも一人でした。
表情もずっと変わらない。笑ったりもしない。
バカな男子からはからかわれ(いじめられてたの方が正確かも知れません)、先生からも相手にされてませんでした。
それでも学校に毎日来ていたんですね。
そこまでの彼女にした事はなんだったんでしょうか。
未だに私はわかりませんが、一つだけはっきりしているのは、彼女は自然にそうなったわけではなく
無理をして、人と話さないで表情も変えないでいた事です。
それは今から書く出来事があったから私は思うんです。
その出来事とは
おそらく小学校5年生くらいだったと思うんですが、鶴岡さんは窓際の席で私は隣の席だったんですね。
で、私が授業中に窓の外の景色(校庭)を見てたんですけど、鶴岡さんも同じように窓の外を見ていたんです。
すると鶴岡さんが校庭の方を見ながら微笑んだんです、ほんの一瞬でしたが。
私はその時に思ったんです。無理をしてまで今の自分を演じているんだな、と。
小学1年生の時から同じクラスでしたが、あの微笑んだ顔を見たのは後にも先にもあの一度だけでした。
私は、その微笑みを見た時、何も言いませんでした。
いえ、何も言ってはいけないような気がしました。
人の心に土足で踏み込んでいくような気がしたから。
彼女が無理している事を壊してしまいそうだったから。
その判断が良かったのか悪かったのかは未だにわかりません。
私があの時に何か言っていれば、もしかしたら彼女の人生が変わったかも知れません。
実は鶴岡さんは中学校はほとんど来ませんでした。
卒業はしましたが、ほとんど姿を見かけませんでした。
今、どこで何をしているかもう私にはわかりませんが、彼女をそこまで追い詰めた事というのは何だったのだろうと、ふと思いました。
人の心は壊れやすく、戻しにくいですよね。

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